テレビでよく見るお笑いタレントの方が、急に体に力が入らなくなり、入院したという報道がありました。
当初は「ギラン・バレー症候群の疑い」と伝えられていましたが、精密検査の結果、「低カリウム性ミオパチー」という病気だったという報道がありました。
聞き慣れない病名に、不安を感じた方も多いかもしれません。
低カリウム性ミオパチーは、血液中のカリウムが不足することで、筋肉に力が入りにくくなる病気です。
この記事では、低カリウム性ミオパチーの基礎知識から、主な症状、受診の目安、治療法、似た症状が出る病気まで、元看護師ライターのわたしがやさしく解説していきます。
- 低カリウム性ミオパチーとはどんな病気なのか
- 低カリウム性ミオパチーで見られる主な症状
- 病院を受診する目安
- 低カリウム性ミオパチーの主な治療法
- 似た症状が出る病気との違い
低カリウム性ミオパチーとは、血液中のカリウム濃度が下がることで、筋肉がうまく力を発揮できなくなる病気です。
カリウムは、わたしたちの筋肉や神経が正しく働くために欠かせないミネラルのひとつです。
汗や尿、便などから毎日少しずつ排出されていますが、通常は食事から補われ、体内の量が一定に保たれています。
ところが、何らかの理由でカリウムが大量に失われたり、細胞の中に偏って取り込まれたりすると、血液中のカリウム濃度が低下してしまいます。
これが「低カリウム血症」で、その影響が筋肉に強く出た状態が「低カリウム性ミオパチー(低カリウム血性ミオパチー)」と呼ばれています。
低カリウム性ミオパチーの原因は、ひとつではありません。
代表的なものとして、次のようなものが報告されています。
・下痢や嘔吐など、消化管から水分と一緒にカリウムが失われるケース
・利尿薬の使用や、原発性アルドステロン症、クッシング症候群など、腎臓からカリウムが過剰に排出される病気
・甘草(かんぞう)を含む漢方薬(芍薬甘草湯など)の長期使用
・エナジードリンクやコーヒー、コーラ、緑茶抽出物飲料など、カフェインを含む飲み物の過剰摂取
・アルコールの多飲
・バセドウ病など甲状腺機能亢進症に伴う周期性四肢麻痺
・生まれつきの体質による、遺伝性の周期性四肢麻痺
このように、日常のちょっとした習慣が引き金になることもあれば、ほかの病気が背景に隠れていることもあります。
自分では思い当たる原因がなくても、発症することがあるため、心当たりがなくても油断はできません。
低カリウム性ミオパチーの症状は、比較的急に現れることが多いといわれています。
手足がだるい、力が入らない、しびれるといった感覚から始まり、次第に筋肉痛やこむら返りをともなうこともあります。
症状が進むと、立ち上がる、歩くといった動作が難しくなる場合もあります。
・手足のだるさ、しびれ、つっぱり感
・力が抜ける感じ、脱力感
・こむら返り、筋肉痛
・症状が進むと、立ち上がりや歩行が困難になることも
脱力は、太ももや二の腕といった体の中心に近い筋肉(近位筋)から始まることが多く、左右で症状の出方に差があるケースも報告されています。
また、カリウムは心臓の筋肉の動きにも関わっているため、重症化すると不整脈など、心臓の働きに影響が及ぶこともあるとされています。
急に手足の力が入りにくくなった、立てない、歩けないといった症状があるときは、自己判断をせず、早めに医療機関を受診しましょう。
とくに、症状が短時間で急速に進んでいる場合や、動悸・息苦しさをともなう場合は、様子を見ずに受診することが大切です。
低カリウム性ミオパチーかどうかは、症状だけで自己判断することはできません。
血液検査でカリウム値を調べてはじめて、診断がつく病気です。
低カリウム性ミオパチーの治療の基本は、不足したカリウムを補うことです。
症状の程度に応じて、経口でのカリウム製剤の内服や、点滴によるカリウム補充がおこなわれます。
カリウム値が回復するにつれて、筋力も比較的すみやかに改善していくことが多いといわれています。
カリウムを補うだけでなく、低カリウム血症の背景にある原因を見つけて対処することも重要です。
問診では、日ごろの食事内容や飲み物、服用している薬(漢方薬を含む)、飲酒の習慣などが詳しく確認されます。
あわせて、甲状腺の機能やホルモンの検査、心電図検査などがおこなわれることもあります。
原因となっている薬剤や飲み物があれば中止し、甲状腺の病気などが見つかった場合は、その治療も並行して進められます。
カフェインを含む飲み物やアルコールの摂り過ぎには注意しましょう。
持病があって漢方薬を長期的に使用している場合は、自己判断でやめず、処方している医療機関に相談してください。
バランスのよい食事を意識し、カリウムを多く含む野菜や果物を適度に取り入れることも、日常でできる対策のひとつです。
低カリウム性ミオパチーの初期症状は、ほかの病気とも共通する点が多くあります。
とくに「急に体に力が入らなくなる」という症状は、いくつかの病気で共通してみられるため、症状だけで見分けるのは難しいものです。
次のような病気との違いも、知っておくと安心につながります。
・ギラン・バレー症候群:手足のしびれや脱力が数日から数週間かけて進行する免疫の病気で、感染症のあとに発症することが多いとされています
・甲状腺機能亢進症(バセドウ病)に伴う周期性四肢麻痺:低カリウム血症をともなう脱力発作で、男性に多くみられます
・遺伝性の周期性四肢麻痺:若いころから繰り返し脱力発作が起こる体質で、家族に同じ症状の人がいることもあります
・脳卒中:手足の脱力に加え、顔の片側のゆがみやろれつが回らないといった症状が急に現れます
・熱中症:倦怠感や脱力感が似ていますが、水分・塩分の補給で改善するかどうかが見分ける目安のひとつです
いずれの病気も、症状だけで自己判断するのは難しいものです。
気になる症状があるときは医療機関を受診し、必要な検査を受けることが、安心への近道です。
わたしはブログのほかに、noteでも医療系の記事(病気の解説記事)を発信しています。
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- 低カリウム性ミオパチーは、血液中のカリウムが不足することで、筋肉に力が入りにくくなる病気です
- 飲み物や薬剤、下痢・嘔吐、甲状腺の病気など、原因はさまざまです
- 急な脱力や、立てない・歩けないといった症状があるときは、自己判断せず医療機関を受診しましょう
- 治療の基本はカリウムの補充で、あわせて原因の特定・治療もおこなわれます
- 似た症状が出る病気もあるため、気になる症状は検査で確認することが安心につながります
- 雲南市立病院医学雑誌ほか掲載症例/低カリウム血症性ミオパチーに関する報告:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kmj/65/4/65_299/_pdf/-char/ja - みやけ内科・循環器科「低カリウム性ミオパチー|関節痛・筋肉痛と内科の病気」:
https://miyake-naika.com/01sindan/kansetu/memo_kansetu26.html - 北海道脳神経疾患研究所医誌「コーヒー・コーラ過剰摂取による低K血症性ミオパチーの1例」:
https://www.hbrf.jp/journal/24-11.pdf - 難病情報センター(GRJ)「低カリウム性周期性四肢麻痺」:
https://grj.umin.jp/grj/hokpp.htm


