「エボラ出血熱」という病名を、ニュースで見かけて気になった方も多いのではないでしょうか。
アフリカのコンゴ民主共和国では、過去最大規模の流行が伝えられています。
ただ、名前は知っていても、どんな病気で、どのくらい注意すればよいものなのか、よくわからないという方も多いはずです。
この記事では、エボラ出血熱の基礎知識から、主な症状、感染経路、治療法、そして日本にいるわたしたちがどう捉えればよいのかまで、看護師ライターの視点でお伝えしていきます。
- エボラ出血熱とはどんな病気なのか
- 感染してみられる主な症状の経過
- どうやって感染が広がるのか
- 治療法とワクチンの現状
- 似た症状が出る病気との違い
結論からお伝えすると、エボラ出血熱はエボラウイルスの仲間に感染することで起こる、致死率の高い感染症です。
正式には、フィロウイルス科オルソエボラウイルス属というグループに分類されるウイルスが原因となります。
このウイルスには複数の種類があり、代表的なものに「エボラウイルス(ザイール株)」「スーダンウイルス」「ブンディブギョウイルス」などがあります。
1976年に、当時のザイール(現在のコンゴ民主共和国)で初めて確認され、以来アフリカ中央部や西部を中心に、たびたび流行が報告されています。
2026年8月、共同通信は、コンゴ民主共和国でエボラ出血熱の感染者が3,600人を超え、同国で過去最大の流行になっていると伝えました。
今回の流行は「ブンディブギョウイルス」という種類が原因とされており、このタイプに対しては、まだ承認されたワクチンがありません。
現地では紛争の影響もあり、医療活動や感染者の追跡が難しい状況が続いているとされています。
エボラ出血熱と聞くと、強い不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、エボラ出血熱は、インフルエンザのように咳やくしゃみを介して簡単にうつる病気ではありません。
主に、感染した人や動物の血液・体液に直接触れることで感染が広がるとされています。
そのため、流行地への渡航歴がない場合、日本国内で感染するリスクは非常に低いと考えられています。
とはいえ、正しい知識を持っておくことは、いざというときの安心にもつながります。
エボラウイルスに感染してから症状が出るまでの潜伏期間は、通常2〜21日、多くは8〜10日程度とされています。
この間は自覚症状がないことがほとんどで、気づきにくいのが特徴です。
発症初期には、発熱や倦怠感、筋肉痛、頭痛、のどの痛みなど、風邪やインフルエンザとよく似た症状が現れます。
この段階だけで、エボラ出血熱かどうかを見分けるのは難しいといわれています。
症状が進むと、食欲不振や吐き気、嘔吐、下痢、腹痛といった消化器症状が現れることがあります。
さらに、発疹や目の充血、肝臓や腎臓の機能低下がみられる場合もあります。
重症化すると、脱水やショック状態、多臓器不全に至ることもあるとされています。
「出血熱」という名前がついていますが、すべての患者さんに出血症状が出るわけではなく、出血がみられる場合も、主に病気が進行した後半の時期とされています。
流行地域への滞在歴がある方で、帰国後21日以内に発熱や倦怠感などの症状が出た場合は、自己判断せず、事前に医療機関へ電話などで連絡したうえで受診しましょう。
直接来院すると、院内での感染対策上、対応が難しくなることがあります。
まずは電話で、渡航歴とあわせて症状を相談するようにしてください。
現在のところ、エボラ出血熱そのものに直接効く治療薬は、まだ限られています。
治療の基本は、点滴による水分・電解質の補給など、症状に応じた支持療法です。
また、エボラウイルス(ザイール株)による感染に対しては、モノクローナル抗体製剤という薬が承認されており、使用されるケースもあります。
ただし、今回コンゴで流行しているブンディブギョウイルスをはじめ、エボラウイルス以外の種類に対しては、有効性が確立された治療薬やワクチンは、まだ実用化されていません。
診断には血液などを用いたPCR検査(遺伝子検査)が使われますが、これは専門の検査機関で行われる特殊な検査です。
予防については、rVSV-ZEBOVという名前のワクチンが開発されていますが、これはエボラウイルス(ザイール株)に対するものです。
流行地域に渡航する際は、野生動物や感染が疑われる人との接触を避けること、こまめな手洗いなど基本的な衛生対策を徹底することが、現時点でできる主な予防策とされています。
エボラ出血熱の初期症状は、発熱や倦怠感など、ほかの感染症とも共通する点が多くあります。
症状だけで見分けるのは難しいため、次のような病気との違いも知っておくと安心です。
- マラリア:発熱や頭痛などエボラ出血熱と似た症状が出ますが、蚊(ハマダラカ)を介して感染する点が異なります。
- インフルエンザ:高熱や倦怠感、筋肉痛など共通する症状が多いものの、咳やくしゃみを介して人から人へうつりやすい点が異なります。
- 腸チフス:発熱や倦怠感が続く点は似ていますが、汚染された飲食物を介して感染することが多い病気です。
- マールブルグ病:エボラ出血熱と同じウイルス性出血熱の仲間で、症状の経過もよく似ています。
- デング熱:発熱や頭痛、筋肉痛に加えて発疹がみられる点が共通していますが、こちらも蚊が媒介する感染症です。
いずれの病気も、症状だけで自己判断するのは難しいものです。
流行地への渡航歴がある場合は、その情報を必ず医療機関に伝えるようにしましょう。
- エボラ出血熱は、エボラウイルスなどオルソエボラウイルス属のウイルス感染によって起こる、致死率の高い感染症です
- 主に感染した人や動物の血液・体液との接触でうつり、インフルエンザのように簡単に人から人へ広がる病気ではありません
- 潜伏期間は通常2〜21日で、発熱や倦怠感などの初期症状のあと、進行すると消化器症状や出血傾向がみられることがあります
- 治療は症状に応じた支持療法が基本で、ウイルスの種類によっては抗体製剤やワクチンが使われることもあります
- 流行地への渡航歴があり症状が気になるときは、自己判断せず医療機関へ電話で相談することが大切です
気になる病気について、まずは正しい情報を知ることが、漠然とした不安をやわらげる一歩になります。
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この記事の作成にあたり、以下の情報を参考にしています。
・厚生労働省検疫所(FORTH)「エボラ出血熱」
https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/name48.html
・日本医師会「エボラ出血熱に関するQ&A(厚生労働省作成)」
https://www.med.or.jp/doctor/kansen/ebola/003340.html
・国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症情報提供サイト「エボラ出血熱(詳細版)」
https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/ebola-virus-disease/detail/index.html


