「レジオネラ菌」という名前を聞いたことはあっても、どんな細菌で、どんな症状が出るのかまでは詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。
実はレジオネラ菌は、温泉やお風呂、加湿器といった身近な水まわりに潜んでいることもある細菌です。
感染すると「レジオネラ症」という病気を引き起こし、高熱や咳などの症状が現れます。重症化すると命に関わることもあります。
この記事では、レジオネラ菌の基礎知識から、感染して起こるレジオネラ症の主な症状、受診の目安、治療法、似た症状が出る病気まで、看護師ライターがやさしく解説していきます。
- レジオネラ菌とはどんな細菌なのか
- 感染して起こるレジオネラ症の主な症状
- 病院を受診する目安
- レジオネラ症の主な治療法
- 似た症状が出る病気との違い
レジオネラ菌とは、河川や湖水、土壌など自然界に広く生息している細菌の総称です。
これまでにおよそ60種類が確認されており、なかでも「レジオネラ・ニューモフィラ」が代表的な菌として知られています。
このレジオネラ菌に感染して起こる病気が「レジオネラ症」で、重症化しやすい「レジオネラ肺炎」と、比較的軽症な「ポンティアック熱」の2つの病型に分かれます。
レジオネラ肺炎は、治療が遅れると急速に症状が進み、命に関わることもある病気です。
一方のポンティアック熱は、インフルエンザに似た症状が出るものの、多くは自然に治まる軽い病型とされています。
名前の由来は、1976年にアメリカ・フィラデルフィアで開かれた在郷軍人会(Legion)の集会で、集団感染が起きたことにあります。
このときの重症肺炎が「在郷軍人病」と呼ばれ、のちに原因菌がレジオネラ菌であると特定されました。
レジオネラ菌は、人から人へうつることはありません。
菌に汚染された水しぶき(エアロゾル)を吸い込むことで感染するのが特徴で、冷却塔の水、加湿器、循環式浴槽(追い炊き機能付きの浴槽や24時間風呂)などが代表的な感染源として報告されています。
国内のレジオネラ症の届出数は年々増加傾向にあり、特に7月・9月に多く報告される傾向があります。
温泉施設や公衆浴場での集団感染が話題になることもあるため、旅行先や外出先での入浴時にも、頭の片隅に置いておきたい知識といえるでしょう。
レジオネラ菌に感染してから症状が出るまでの潜伏期間は、2日〜10日程度、平均すると4〜5日ほどといわれています。
この間は自覚症状がないことが多いため、心当たりがあっても気づきにくいのが特徴です。
ここでは、重症型のレジオネラ肺炎と、軽症型のポンティアック熱、それぞれの症状をみていきましょう。
レジオネラ肺炎では、全身の倦怠感や頭痛、食欲不振、筋肉痛から始まり、38℃以上の高熱や咳、寒気、胸の痛み、息苦しさがみられるようになります。
まれに、心筋炎など肺以外の症状が現れることもあります。
また、意識がぼんやりする、幻覚が見える、手足が震えるといった中枢神経系の症状や、下痢がみられるのもレジオネラ肺炎の特徴とされています。
軽い症状で始まっても、適切な治療がなされないと急速に悪化することがあるため、注意が必要です。
ポンティアック熱では、突然の発熱や悪寒、筋肉痛などがみられます。
レジオネラ肺炎とは異なり症状は一過性のもので、多くの場合、特別な治療をしなくても数日のうちに自然に治まります。
38℃以上の高熱が続く、咳や息苦しさをともなう、といった症状があるときは、自己判断せず早めに医療機関を受診しましょう。
特に、高齢の方や新生児、日常的にお酒を多く飲む方、喫煙されている方、透析治療を受けている方、臓器移植を受けた方、免疫の働きが低下している方は、重症化しやすいといわれています。
これらに当てはまる方が発熱や呼吸器の症状を感じたときは、早めの受診を心がけてください。
レジオネラ症かどうかは、症状だけで自己判断することはできません。
気になる症状が続くときは、医療機関を受診し、必要な検査を受けるようにしましょう。
レジオネラ肺炎は細菌感染症であるため、マクロライド系やニューキノロン系などの抗菌薬による治療が行われます。
早期に診断し、早期に治療を始めることが、重症化を防ぐうえで重要とされています。
診断には、尿を使った検査(尿中レジオネラ抗原検査)や、遺伝子検査(LAMP法)、血液中の抗体を調べる検査などが用いられます。
一般的な風邪薬や解熱剤だけでは、原因となる細菌そのものを取り除くことはできません。
症状が長引く場合や重いと感じる場合は、医療機関で適切な検査と治療を受けることが大切です。
なお、ポンティアック熱については、多くの場合、抗菌薬を使わなくても自然に軽快していきます。
現在のところ、レジオネラ症を防ぐワクチンはありません。
そのため、感染源になりやすい場所を清潔に保つことが、日常でできる予防策になります。
- 加湿器はこまめに水を入れ替え、タンクや容器を毎日洗浄する
- 循環式浴槽(追い炊き機能付きの浴槽など)は、取扱説明書に沿って定期的に清掃する
- 浴槽内にぬめり(バイオフィルム)が生じないよう、汚れをためない
レジオネラ症の初期症状は、高熱や倦怠感、咳など、ほかの病気とも共通する点が多くあります。
症状だけで見分けるのは難しいため、次のような病気との違いも知っておくと安心です。
- インフルエンザ:高熱・倦怠感・筋肉痛など共通する症状が多いものの、人から人へ感染する点がレジオネラ症とは異なります
- 肺炎球菌などによる一般的な細菌性肺炎:咳・高熱・呼吸困難など、レジオネラ肺炎と似た経過をたどることがあります
- マイコプラズマ肺炎:発熱と乾いた咳が長く続くのが特徴で、比較的若い世代にもみられます
- 新型コロナウイルス感染症:発熱・咳・倦怠感などの症状が共通しており、検査をしなければ見分けがつきにくいことがあります
- 熱中症:倦怠感・頭痛・吐き気などが似ていますが、水分や塩分の補給で改善するかどうかが見分ける目安の一つです
いずれの病気も、症状だけで自己判断するのは難しいものです。
気になる症状があるときは医療機関を受診し、必要な検査を受けることが、安心につながります。
- レジオネラ菌は、冷却塔や加湿器、循環式浴槽など身近な水まわりに潜む細菌です
- 感染すると、重症化しやすい「レジオネラ肺炎」と、軽症で自然に治まる「ポンティアック熱」のいずれかを発症します
- 38℃以上の高熱や咳、息苦しさ、強い倦怠感が続くときは、自己判断せず医療機関を受診しましょう
- 治療には抗菌薬が使われ、早期の診断・治療が回復への近道です
- 加湿器や浴槽をこまめに清掃することが、日常でできる予防につながります
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- 厚生労働省「レジオネラ症」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00393.html - 岐阜大学大学院医学系研究科 永井研究室「レジオネラ研究紹介」
https://www.med.gifu-u.ac.jp/research/grad/legionella/ - 国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症情報提供サイト「レジオネラ症」
https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/legionellosis/index.html


