ノロウイルスは冬季に流行しやすい感染症の一つで、主に嘔吐や下痢、発熱などの症状を引き起こします。
感染経路は、食品のウイルス汚染や接触、空気感染など多岐にわたり、二枚貝や加熱不十分な食品による感染がよく知られています。
また、調理過程でウイルスが食品に付着し、集団感染を引き起こすこともあるため、食品を扱う場面では特に徹底した対策が必要です。
この記事では、ノロウイルスに関する基本情報と具体的な予防策、医療機関を受診する目安などを詳しく解説していきます。
ノロウイルス感染症に対する正しい知識を身につけ、冬を健康に過ごしましょう。日常的な感染対策は、家庭内感染(二次感染)の予防にも効果的です。
ノロウイルス感染症とは?
ノロウイルスは感染力が非常に強く、胃腸炎や食中毒の原因となるウイルスの一つです。ノロウイルス自体は一年中存在していますが、冬に流行しやすい傾向がみられます。感染すると吐き気や嘔吐、下痢などの症状があらわれ、1〜2日間続きます。子どもや高齢者では重症化するリスクが高いため、注意が必要です。手洗いや消毒、食品の加熱などの予防策を徹底し、感染予防に努めましょう。
また、ノロウイルス感染症に対する特効薬は存在せず、脱水予防のための水分補給や、症状を緩和するための対症療法が中心となります。ウイルスを体外へ排出する妨げとなるため、下痢止めの薬の使用は避けましょう。
ノロウイルスの主な感染経路
ノロウイルスは、主に次の4つの方法で広がります。
食品媒介感染
ノロウイルスは、食品を介して感染が広がる場合があります。その代表例が、生の二枚貝(カキなど)です。加熱が不十分でウイルスが残った状態で摂取すると、感染リスクが高まります。特に流行シーズンは生食を避け、85〜90度で90秒以上、十分に加熱しましょう。また、感染者が食品を扱うと調理や配膳の過程でノロウイルスが食品に付着し、集団食中毒を引き起こすおそれがあります。吐き気や下痢などの症状がみられる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
接触感染
接触感染とは、病原体が体(手など)に付着し、その汚染された手で口や鼻、目などの粘膜に触れることで感染する、感染経路の一つです。例えば、感染者の便や嘔吐物を処理した後の手洗いや消毒が不十分だと、触れたドアノブやリモコンなどにウイルスが付着します。ノロウイルスは非常に耐久性が高く、物の表面に7日以上生存し続けることもあるため、感染予防にはこまめな手洗いと消毒が重要です。
空気感染
感染者の嘔吐物や便が乾燥すると、ウイルスは微細な粒子となって空気中に浮遊し、感染が拡大するおそれがあります。嘔吐物や便を処理する際は、迅速かつ適切に行うことが重要です。また、室内にノロウイルスがとどまらないよう定期的に換気を行い、空気を新鮮に保ちましょう。
ノロウイルス感染症の主な症状は?
ノロウイルスに感染すると、24〜48時間後に以下のような症状があらわれます。
- 吐き気
- 嘔吐
- 腹痛
- 下痢
- 発熱
ノロウイルス感染症の症状の特徴は、嘔吐と下痢の症状が強く出ることです。一般的には、適切な水分補給と十分な休養で回復しますが、乳幼児や高齢者は重症化する可能性があるため注意が必要です。気になる症状があれば早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。ノロウイルス感染症の治療薬は開発されていないため、対症療法が中心となります。ウイルスを体外に排出することが回復のカギとなるため、下痢止めの薬の使用は避けましょう。
家庭でできる!ノロウイルスの感染予防策
ノロウイルス感染症を予防するためには、日常的な感染対策を徹底し、嘔吐物や排泄物を適切に処理することが大切です。ここでは、自分でできる感染対策について具体的な方法を解説します。
流水と石けんによる手洗い
ノロウイルス感染症の予防には、流水と石けんを使った手洗いが効果的です。手のひらだけでなく指の間や爪の間、手首も念入りに洗いましょう。食事の前やトイレの後、感染者の嘔吐物を処理した後など、こまめに手を洗うことが大切です。また、手洗い後はペーパータオルを使用し、タオルの共有を避けることも感染予防につながります。
アルコール消毒はNG?正しい消毒方法と注意点
ノロウイルスの消毒には、次亜塩素酸ナトリウムが有効です。ノロウイルスはアルコールに強い抵抗力をもつため、十分な消毒効果を得られません。嘔吐物や便が触れた物は1,000ppm(0.1%)の次亜塩素酸ナトリウムで消毒することが推奨されています。ただし、木製の家具には効果が薄いため、場所によってアルコール消毒液と次亜塩素酸ナトリウムを使い分けるとよいでしょう。一回の拭き掃除ではなく、二度拭きするとさらに効果的です。
食品はしっかり加熱しよう!
生の食材や未加熱の食品には、ノロウイルスが付着している可能性があります。調理する際は内部温度が85〜90度に達するまで、しっかり加熱しましょう。温度や加熱時間が不十分だとウイルスが生き残っている可能性があるため、中心部まで均等に加熱することが重要です。
家庭内感染予防策:嘔吐物や便の処理のポイント
家庭内感染の予防には、嘔吐物や便を適切な方法で処理することが重要です。まず、使い捨ての手袋とマスク、エプロンを着用しましょう。嘔吐物や便は早急に処理し、乾燥させないことがポイントです。汚染した場所に1,000ppm(0.1%)の次亜塩素酸ナトリウムを静かに注ぎ、ペーパータオルなどで拭き取ります。使用した紙や手袋、エプロンなどは袋に密閉して処分しましょう。二次感染予防のため、処理をした後はしっかり手を洗うことが大切です。
学校や職場でできる感染対策
ノロウイルスの感染を防ぐには、学校や職場でも感染対策を徹底することが必要です。まず、こまめな手洗いと消毒を心がけましょう。ドアノブや照明のスイッチなど、共有スペースは定期的に消毒することをおすすめします。従業員や生徒が感染または発症した場合は自宅での休養をすすめ、症状が完全に回復するまで登校・出勤を控えるよう指導しましょう。また、感染者の嘔吐物や排泄物が乾燥すると、ノロウイルスが空気中に浮遊し、空気感染のリスクが高まります。嘔吐や排泄後は速やかに処理し、次亜塩素酸ナトリウムで消毒することが重要です。
感染が疑われたら?医療機関受診の目安
医療機関の受診が必要かどうかを判断するポイントは、いくつかあります。特に注意すべき症状は、激しい嘔吐や下痢、それにともなう脱水症状です。脱水のサインは、口の乾きや尿量・排尿回数の減少、倦怠感などです。乳幼児や高齢者、持病のある人は、症状が軽度であっても重症化しやすいため、早めの受診をおすすめします。
ノロウイルスの特効薬はないため、医療機関で行われるのは主に対症療法です。水分補給が難しい場合や脱水傾向がみられる場合は、点滴による水分補給を受けられることもあるため、担当の医師に相談してみましょう。
まとめ
ノロウイルスは胃腸炎や食中毒を引き起こすウイルスで、冬に流行しやすい傾向がみられます。
主な感染経路は、以下の3つです。
- 食品媒介感染:ウイルスが付着した食品の摂取による感染
- 接触感染:ウイルスが付着した物や手から感染
- 空気感染:嘔吐物や便から浮遊したウイルスを吸い込むことによる感染
症状には吐き気や嘔吐、下痢、発熱などがありますが、通常は1〜2日で回復します。ただし、乳幼児や高齢者では重症化するリスクが高いため、特に注意が必要です。
感染予防には、流水と石けんによる手洗いや消毒、食品の十分な加熱処理が有効です。また、感染者の嘔吐物や便を処理した後は次亜塩素酸ナトリウムで消毒し、二次感染を防ぎましょう。
ノロウイルス感染症は、正しい知識と日常的な対策で感染を防ぐことができます。感染予防策を正しく実践し、冬を健康に過ごしましょう。
参考文献
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/452-norovirus-intro.html
https://www.jichi.ac.jp/center/sinryoka/kansen/taisaku_05.html
https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/gyokai/busitu/biseibutu/nov.html
参考情報
文字数:3,014文字
(タイトル・見出しを除く)
執筆者
Webライター|立岩 奈緒