適応障害とは?症状やうつ病との違い、治療法について解説

メディカル

適応障害は、生活環境や人間関係の変化などが引き金となって発症する心の病気の一つです。ご自身や労働者が適応障害と診断された場合、どのように対応したらよいのでしょうか。原因別の対応法を、症状やうつ病との違いとともに解説します。

「仕事のことを考えるとどきどきして眠れない。」「休日は元気なのに、体がだるくて仕事に行けない。」などの症状に心当たりはありませんか?

仕事のことを考えたときだけ症状があらわれる場合、もしかするとそれは適応障害の症状かもしれません。

この記事では適応障害の症状や原因、対応法について解説します。

労働者のメンタルケアに悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。

適応障害とは

適応障害とは、日常生活のなかで受けたストレスによって心身にさまざまな症状があらわれている状態です。原因となる要素には進学や就職、転職などによる生活環境・人間関係の変化があります。主な症状は不安や食欲不振、不眠などで、ストレスの原因から距離を置くと症状が軽減する点が特徴です「休日は元気だが、仕事のことを考えると急に不安になって涙が出る。」などの症状がある場合は適応障害の可能性があるため、早めに病院を受診しましょう。

適応障害の症状

適応障害の症状は情緒面と行動面の2種類に大きく分けられます。それぞれの症状について詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

情緒面の症状

  •  不安感
  • 抑うつ(憂鬱・気分の落ち込み)
  • 極度の緊張(手が震える・冷や汗をかくなど)
  • 集中力の低下

これらの症状によって動悸や息苦しさ、食欲低下などの身体症状があらわれることもあります。また、強い不安感や緊張から不眠が続いている場合には薬物療法の対象となる場合もあるため、担当の医師に相談してみましょう。

行動面の症状

行動面の症状は社会生活に大きな影響を与えるため、医師の指導のもとその人に合った対応が求められます。

  • 登校拒否
  • 出勤拒否
  • 暴飲暴食
  • 過度の飲酒

これらの症状によって学校生活や仕事、日常生活に影響が出ている場合を適応障害と呼びます。転校や休職など、ストレスの原因から離れることによって症状が軽減・改善する点が特徴です。

適応障害の原因

適応障害の原因には結婚・離婚による家庭環境の変化や、進学・転職による人間関係の変化などがあります。また、ストレスへの耐性や変化に対する適応能力など、性格的な要素も影響して適応障害を引き起こします。適応障害を発症すると食欲低下や不眠、気分の落ち込みによってこれまでどおりの生活が困難な状態に陥ります。まずは十分な休養をとり、心の回復を待ちましょう。その際、プレッシャーを避けるため休養期間には期限を設けないことをおすすめします。

適応障害とうつ病の違い

適応障害とよく似た症状があらわれる病気の一つが、うつ病です。適応障害とうつ病には以下のような違いがあります。

 適応障害うつ病
特徴原因が明確原因から離れると症状は改善する原因は不明確原因を取り除いても症状が続く
原因結婚や離婚、学校・職場など環境の変化それに伴う人間関係の変化脳内の神経伝達物質であるセロトニン・ノルアドレナリンの減少
症状・不安感
・抑うつ
・極度の緊張
・食欲低下
・不眠
以下のような症状が2週間以上続く
・抑うつ
・無気力
・食欲の異常(増進・低下)
・睡眠障害(過眠・不眠)
・希死念慮(死にたい・消えたい)
治療法・原因を取り除く
・距離を置く
・食事や睡眠を安定させ、心を休ませる
・不眠などの症状に対して薬物療法を行うこともある
・抗うつ薬や抗不安薬を用いた薬物療法
・カウンセリング

適応障害とうつ病どちらもストレスなどの要素が原因で発症しますが、うつ病の場合は引き金となるきっかけが明確ではありません。適応障害は原因が明確であるため、転校や休職などによって症状が軽減・改善する特徴があります。また、適応障害に対する薬物療法の目的は食事・睡眠の改善による心の回復です。うつ病に対する薬物療法では、脳内の神経伝達物質を増やすことで抑うつ・無気力による諸症状の改善を期待する、という違いがあります。どちらも心の病気であるため、症状の有無の確認だけで病気の有無や程度を判断することはできません。対話によって気持ちの聞き取りを行うことが大切です。しかし、教員や上司との面談自体がストレスになっている可能性もあります。カウンセリングや相談の窓口には産業医や外部の医療機関など、複数の選択肢を準備しておく必要があります。

適応障害になりやすい人の特徴

適応障害はストレスが原因で引き起こされる病気です。そのため、以下のような性格の人は適応障害を発症しやすい傾向にあります。

  • 真面目で完璧主義
  • 空気を読みすぎてしまう
  • 環境の変化に敏感
  • 心配性
  • 相手の言葉や態度で傷つきやすい
  • 失敗を引きずりやすい
  • 人に頼るのが苦手

上記のような気質の人はストレスを感じやすく、気分転換も苦手なことから適応障害を発症しやすいといえるでしょう。適応障害を予防するためには、自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。

適応障害を発症した労働者への対応法

現代のストレス社会において、働くことと心の病気は切っても切れない関係にあります。労働者に心の病気のサインがみられたり直接相談を受けたりした場合、どのように対応したらよいのでしょうか。ここでは2つご紹介します。

産業医の相談を促す

まずは、産業医への相談を提案してみましょう。上司や同僚との関係が原因で適応障害を引き起こしている場合、面談自体がストレス源となって症状が悪化するリスクがあります。相談相手には、第三者が適しています。職場環境を知る産業医に相談することで、今後の働き方についてよいアドバイスを得られるでしょう。しかし、産業医は診断や処方などの治療に関わることはできません。労働者本人が投薬治療による症状改善、休職のための診断書などを希望している場合には、病院受診をすすめる必要があります。産業医ができること・できないことをあらかじめ説明しておきましょう。産業医は心を病んでしまった労働者本人へのアドバイスだけでなく、メンタルケアにあたる人への指導なども行います。病気について正しい知識をもち、お互いが仕事に集中できる職場環境を整えましょう。

休職を勧める

心の病気は、早期発見・早期対応によって症状の重症化を防ぐことができます。食欲低下や不眠などの症状があり、日常生活や業務に影響が出ている場合には休職を勧めましょう。適応障害による症状は、ストレスの原因から離れることで軽減・改善します。そのため、ストレスの原因が仕事にある場合は休職し、心が回復するのを待つ必要があります。休職には医師の診断書が必要になるため、産業医に相談してみましょう。必要な手続きや書類についてアドバイスをくれるはずです。

職場環境を見直す

適応障害には、ストレス源から離れることで症状が軽減するという特徴があります。そのためまずはストレスの原因を突き止め、原因を解消もしくは距離を置くための措置が必要です。ここでは、原因別に具体策を2つご紹介します。

人間関係が原因の場合

心身ともに万全な状態で仕事に臨むために、良好な人間関係の構築は必要不可欠です。人間関係がストレスの原因になっている場合、指導や面談による対応の改善、または部署異動などによって環境を変える必要があります。また、円滑なコミュニケーションを図るために1on1ミーティングという方法もあります。上司と部下が1対1で面談を行うもので、信頼・協力関係の構築などに役立つ方法です。しかし、すでに関係が悪化している場合はさらなる関係悪化のリスクがあります。ストレスの原因がどこにあるのか、まずは労働者本人から気持ちを聞くことが重要です。

業務内容や労働環境が原因の場合

ストレスの原因となりうる労働環境の要素は、室温や湿度、照明、音などです。理想的な労働環境の条件に関しては、産業医に相談してみましょう。作業に適さない労働環境下では作業効率も低下するため、早急に改善措置をとることが必要です。また、業務量や業務内容を見直して仕事の無駄を省くことで、長時間労働を改善できます。労働者一人ひとりが背負う業務量や責任の負担を減らすことで、心の病気を予防・改善できるかもしれません。

復職ケアを行う

適応障害を発症した労働者が復職する場合、一人ひとりに合った復職ケアが必要です。まずは休職中の労働者と面談を行い、健康状態を把握します。直接面談することが難しい場合には電話やメール、本人の許可を得たうえで主治医から情報提供を受けることも可能です。本人が復職を希望し、かつ主治医が復職可能と判断した場合、本人と相談しながら具体的な復職時期を決定します。次に、産業医や主治医からのアドバイスをもとに、復職後の配属部署の検討や業務内容の調整を行います。初めは数時間の勤務から始め、少しずつ時間をのばしていくなどの配慮が必要です。また、適応障害再発を予防するためにメンタルケアは欠かせません。定期的に産業医と面談を行うなど、健康状態の把握に努める必要があります。

まとめ

適応障害は、発症のきっかけとなった原因がはっきりしていて、そこから距離を置くことで症状が改善するという特徴があります。

そのため適応障害を発症した場合はまず休暇をとったり休職したりして、心を回復させることが大切です。

心の病気を抱えた労働者への誤った対応は、病状悪化や訴訟問題のリスクにもつながります。

また、適応障害の発症・再発予防には産業医によるストレスチェックやケアも重要です。専門的なアドバイスをもとに、一人ひとりに合ったケアを行いましょう。

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