神経症性障害とは?日常生活にひそむ不安とその対処法

メディカル

神経症性障害とは、強い不安や緊張によって引き起こされる心の病気の一つです。

ストレスやプレッシャーに対して脆弱な状態となり、仕事や人間関係などの社会生活に悪影響を与えることがあります。

また、さまざまな身体症状・精神症状が日常生活に影響を及ぼし、QOL(生活の質)を著しく低下させるリスクも。

しかし、ご自身に合ったセルフケアを見つけることができれば、症状を緩和し日常を快適に過ごせるようになるでしょう。

この記事では、神経症性障害でよくみられる具体的な症状やリスク要因を解説し、効果的なセルフケア方法をご紹介します。

安心して社会生活を送るために、ぜひ参考にしてみてくださいね。

神経症性障害とは?

神経症性障害とは、不安や緊張、恐怖といった感情が長期間続くことで、日常生活に支障をきたしている状態です。この病気は、特定の状況や出来事に対して過剰な反応を示すことが特徴で、主に心理的な要因が関与しています。神経症性障害には、パニック障害や強迫性障害、不安障害などが含まれており、それぞれ症状のあらわれ方が異なります。また、身体的な不調をともなうことも多く、心身に大きな負担をかけることがあります。適切なセルフケアや早期対処によって症状改善が期待できるため、早めの対応が重要です。

神経症性障害の主な症状

神経症性障害の症状は、精神症状・身体症状の大きく2種類に分けられます。ここでは、それぞれの主な症状を具体的に解説していきます。これらの症状に心当たりのある方は、早めに専門の医師に相談しましょう。

精神的な症状

不安感や恐怖感

神経症性障害の精神症状として、不安感や恐怖感がみられることがあります。日常生活に支障をきたす程強い不安・恐怖を感じることが特徴です。不安感とは、将来に対する過剰な心配や、漠然とした恐怖を感じている状態です。まれにパニック発作を引き起こす場合もあります。恐怖感とは、特定の状況や物事に対して過度に恐れの感情を抱いている状態です。高所や閉所に対する恐怖が典型的で、これらの症状は心理的なストレスや緊張を引き起こします。患者のQOL(生活の質)に深刻な影響を与える可能性があるため、専門的な治療やカウンセリングを受けることをおすすめします。

集中力の低下やイライラ感

集中力の低下やイライラ感は、神経症性障害で起こりうる症状の一つです。集中力が低下すると仕事や家事の効率が悪くなり、生産性の低下につながります。また、思考や注意が散漫になりやすいため、仕事で重大な事故を引き起こす危険もあります。イライラ感とは、小さな問題に対して過剰に反応する状態です。対人関係のトラブルを起こす可能性があるだけでなく、心の健康に深刻な影響を与えるため、早期治療が大切です。

うつ症状

神経症性障害では、気分の落ち込みや無気力などの、うつ症状が顕著にみられることがあります。具体的には無力感や意欲の低下、「楽しい」という感情の薄れ、日常生活に対する興味の減少などです。うつ状態に陥ると、精神的な疲労やQOL(生活の質)の低下を引き起こし、仕事や人間関係に悪影響を及ぼします。

身体的な症状

動悸や呼吸困難感

神経症性障害では、動悸や息切れといった身体的な症状がみられることもあります。動悸とは心臓が強く脈打つような感覚で、不安や緊張が高まると発生しやすい症状です。呼吸困難感とは、のどや胸を締め付けられているような感覚で、息苦しさを感じる状態を指します。パニック発作時に特に強くみられる症状です。これらは不安感・恐怖感をさらに増強させ、精神症状を悪化させる可能性があります。

発汗

ストレスや不安感が高まると体温調節機能が乱れ、過剰な発汗を引き起こすことがあります。通常の体温調節や運動による発汗とは異なり、急に多量の汗や冷や汗をかくことがあります。人前に出る場面やストレスの多い状況で起こりやすく、精神面への負担をさらに増加させるリスクがあります。適切な治療やストレス管理を取り入れることで、発汗の症状を軽減し、QOL(生活の質)を向上させることができるでしょう。

頭痛

神経症性障害にともなう身体症状の一つに、頭痛があります。頭部全体の圧迫感や締め付け感として感じられる、慢性的な痛みが特徴です。精神的なストレスや不安が蓄積することで引き起こされるタイプの頭痛で、緊張型頭痛とも呼ばれます。神経症性障害による頭痛は、精神的な負荷が原因であるため、症状が長引くこともあり、仕事や日常生活にも影響を及ぼします。

胃痛や吐き気などの消化器症状

ストレスや不安感が高まると、胃の違和感や胃痛、吐き気、食欲不振などといった消化器症状がみられることがあります。これらの症状は、ストレスの影響で胃腸の働きが悪くなることで発生します。慢性的なストレスや強い不安を感じている場合、胃酸過多や胃痙攣など、より深刻な病気に発展するリスクもあります。

神経症性障害のリスク要因

遺伝的要因

神経症性障害を引き起こす原因の一つとして、遺伝的要因が関与していると考えられています。研究によると、家族に神経症性障害をもつ人がいる場合、その子孫が同じ病気を発症するリスクが高いことが示唆されています。特に、両親や兄弟姉妹に神経症性障害をもつ人がいる場合、その傾向はより強まります。遺伝的に不安やストレスに対する耐性が弱く、脳内の化学物質や神経伝達物質のバランスが乱れることで、さまざまな症状が引き起こされると考えられているためです。ただし、神経症性障害の原因は遺伝的なものだけでなく、さまざまなリスク因子が複雑に影響しあって発症するため、適切な予防と対処が重要です。

環境要因

神経症性障害の発症には、環境要因が大きく影響していると考えられています。具体的には、幼少期のトラウマや家庭内でのストレスフルな状況、長期にわたる職場でのプレッシャーなどです。また、生活環境の急激な変化や人間関係の悪化も、神経症性障害を引き起こすきっかけになることがあります。これらの環境的ストレスが続くと不安感や恐怖感が増大し、神経症性障害を引き起こす可能性があるため、適切な方法でストレスを管理することが重要です。

気質・性格的要因

神経症性障害の発症には、個人の気質や性格が大きく影響をあたえることがあります。慎重で完璧主義な性格や、責任感が強く他者からの評価を気にする傾向がある人は、ストレスや不安を感じやすく、神経症性障害の発症リスクが高まるといわれています。また、自己主張が苦手な人や、周囲の環境変化に敏感に反応する人もストレスを感じやすく、症状を引き起こしやすい傾向があります。こうした気質的な特徴は、遺伝的要因と相まって発症リスクを高めるため、早期のストレス対策やメンタルケアが重要です。

その他のリスク要因

神経症性障害のリスク要因には、遺伝的要因や環境要因、気質・性格的要因以外にもさまざまなリスク要因が存在します。その一つが、身体的な健康状態の悪化です。例えば、慢性的な病気や疲労、ホルモンバランスの乱れは、ストレス耐性を低下させ、神経症性障害の発症リスクを高める可能性があります。また、薬物やアルコールの乱用も、脳内の神経伝達物質に影響を与えるため、症状を悪化させる要因となり得ます。さらに、社会的な孤立や経済的な不安、急な生活の変化(離婚や失業など)も精神的負担を大きくし、神経症性障害の発症につながることがあります。

神経症性障害の不安を和らげるセルフケアのコツ

神経症性障害による強い不安・恐怖感を和らげるには、日々のセルフケアが重要です。ここでは、自宅で簡単にできるストレス管理の方法を具体的に4つご紹介します。

規則正しい生活習慣

毎日決まった時間に就寝・起床することで体内リズムが整い、ストレスに対する耐性が高まります。また、バランスのとれた食事も、心身の健康維持に効果的です。適度な運動は脳内のセロトニン分泌が促進され、ストレスの軽減につながるでしょう。ストレスに対するセルフケアを日々の生活に取り入れることで、神経症性障害の症状を軽減し、心の安定を図ることが期待できます。

リラクゼーション法

日常生活における不安や恐怖感を軽減するには、リラクゼーション法が効果的です。深呼吸や腹式呼吸を行うことで心拍数を落ち着け、リラックスした状態をつくり出すことができるでしょう。ここでは、具体的に瞑想とマインドフルネスについてご紹介します。

瞑想

瞑想とは、心を静め、自身の内面に集中するための精神的な技法です。一般的には、静かな場所で目を閉じ、呼吸に意識を集中することで心を落ち着けます。ストレスの軽減や感情の安定、集中力の向上に効果があるといわれており、心の平穏を得るために広く実践されています。定期的に行うことで、リラックス効果が期待できるでしょう。

マイドフルネス

マインドフルネスとは、過去・未来ではなく今この瞬間に意識を集中し、今、自身が経験していることを、ありのまま受け入れることを指します。この方法は、自分自身の感覚や感情を客観的に観察できることが特徴です。ストレスや不安の軽減、感情のコントロール、心身の健康改善に役立つとされており、多くの心理療法やストレス管理プログラムに取り入れられています。

ストレス管理

神経症性障害の不安を軽減するためには、効果的なストレス管理が必要不可欠です。まず、日常生活におけるストレスの原因を特定し、ご自身に合った適切な対処法を見つけましょう。適度な運動や趣味の時間をつくることで、心身の緊張をほぐし、リラックスできる時間をつくることができます。また、ストレスの原因となりえる状況を改善・回避するために、タイムマネジメントや優先順位の設定を試してみるのもよいでしょう。ストレス軽減に即効性のある方法としては、深呼吸やリラクゼーション法があります。自分なりのストレス管理法を身に着け、日常的に実践することで、神経症性障害の症状を軽減・改善することができるでしょう。

セルフケアの日記をつけるのもおすすめ

神経症性障害による不安・恐怖を軽減するためには、セルフケアの日記をつける方法も効果的です。日記を書くことで自分の感情や思考を整理し、ストレスのトリガーを特定する手助けになってくれるでしょう。日々の感情や出来事を記録することで、自分が不安を感じやすい状況を把握しやすくなり、対策を講じる際の参考になります。また、日記を書く時間が習慣化すれば、それ自体がリラックスできる時間となり、不安の軽減や感情のコントロールに役立つでしょう。自分自身の感情と向き合う時間をつくることで心を安定させ、神経症性障害の症状軽減に効果が期待できます。

まとめ

神経症性障害は、日常生活にひそむ不安やストレスによって引き起こされる心の病気の一つです。

精神症状の具体例として、以下のようなものがあります。

  • 不安感
  • 恐怖感
  • 集中力の低下
  • イライラ感
  • うつ症状

また、強い不安や緊張感が、以下のような身体症状を引き起こす場合もあります。

  • 動悸
  • 呼吸困難感
  • 発汗
  • 頭痛
  • 胃痛や吐き気などの消化器症状

これらの症状は、日々の生活や仕事などの社会生活に大きな影響を与え、QOL(生活の質)を著しく低下させる可能性があります。

神経症性障害の発症リスクや、ご自身が不安を感じやすい状況を理解し、症状の軽減・改善・予防に効果的なセルフケアを実践しましょう。

具体的なセルフケアの方法としては、規則正しい生活習慣の獲得やリラクゼーション法、ストレス管理、日記の活用などがあります。

ぜひ、ご自身の生活に取り入れやすいものから試してみてくださいね。

参考情報

文字数:4,511文字
(タイトル・見出しを除く)

執筆者

元看護師ライター|立岩 奈緒(たていわ なお)

タイトルとURLをコピーしました