HIV感染症は、発症するとエイズ(後天性免疫不全症候群)へと進行する可能性のある病気です。
今では治療法が進歩し、適切に管理すれば長く健康を維持できるようになっています。
正しい知識を持つことが、自分と大切な人を守る第一歩になります。
概要
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は、体の免疫機能を少しずつ壊していくウイルスです。
感染してもすぐに症状が出るわけではなく、数年から10年以上の経過をたどって免疫が低下し、日和見(ひよりみ)感染症やがんにかかりやすくなるのが特徴です。
- HIV感染症:ウイルスに感染した状態
- エイズ:免疫が著しく弱り、重い感染症やがんを発症した状態
このように、HIV感染症とエイズは同じ意味ではなく、病気の進行段階を指しています。
主な症状
HIV感染初期には、風邪に似た症状が出ることがあります。
- 発熱、のどの痛み、リンパ節の腫れ
- 筋肉痛や倦怠感
- 発疹
その後は長い無症候期に入るため、自覚症状がないまま経過する人が多いです。
進行してエイズになると、以下のような症状が現れやすくなります。
- カンジダ症や肺炎などの日和見感染症
- 強い体重減少
- 悪性リンパ腫などのがん
主な治療法
HIV感染症は現時点で根治はできませんが、治療薬によってコントロール可能です。
- 抗HIV薬(ART:抗レトロウイルス療法):複数の薬を組み合わせてウイルスの増殖を抑える
- 継続的な内服によって、体内のウイルス量を検出できないほど減らせる
- 適切に治療すれば、非感染者と同じくらいの寿命を目指せる
治療は一生続ける必要がありますが、副作用が少ない薬も増え、生活の質を保ちながら過ごすことが可能です。
予防・セルフケア
HIV感染は主に血液や性行為を通じて広がります。
日常生活での接触(握手や食器の共有)では感染しません。予防のために大切なのは以下の点です。
- コンドームを正しく使用する
- 注射器や針を共用しない
- 感染リスクが高い場合は検査を受ける
- 妊娠中の母親が感染している場合は、適切な治療で母子感染を防ぐ
また、すでに感染している人は、定期的な通院と薬の内服を続けることが最も大切なセルフケアになります。
まとめ
HIV感染症は適切な治療でコントロールできる病気です。
感染しても必ずエイズを発症するわけではなく、早期の発見と継続的な治療によって健康的な生活を送れます。
偏見にとらわれず、正しい知識を持ち続けることが社会全体の安心にもつながります。