糖尿病を放置するとどうなる?糖尿病の分類・症状・治療方法を解説

メディカル

糖尿病は、高血糖状態が続くことで体にさまざまな影響を及ぼす病気です。

この病気を放置すると、心臓病や腎不全、失明、神経障害などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。

本記事では、糖尿病の種類や起こりうる症状、治療法などについて詳しく解説していきます。

血糖値の異常を指摘されたことがある人や生活習慣に不安がある人、ご家族が糖尿病と診断されたことのある人は、ぜひ参考にしてみてください。

糖尿病とは?

糖尿病とは、血糖値が慢性的に高くなる病気です。血糖値は、膵臓(すいぞう)のβ細胞から分泌されるインスリンによってコントロールされていますが、インスリンのはたらきが低下したり、分泌量が低下したりすると高血糖状態が続きます。糖尿病が進行すると心血管疾患や神経障害、腎不全などの合併症を引き起こすリスクが高まるため、早期の発見と適切な管理が重要です。

糖尿病の分類

一言で糖尿病と言っても、その原因や特徴はタイプによって異なります。ここでは、糖尿病の各分類について詳しく解説し、それぞれの特徴やリスク要因、治療のアプローチについてご紹介します。

1型糖尿病

1型糖尿病とは、膵臓のβ細胞が自己免疫反応によって破壊されることで、インスリンの分泌がほとんどまたは全くできなくなる慢性疾患です。小児期や青年期に発症することが多いですが、成人でも発症することがあります。具体的な原因は不明ですが、遺伝的要因や環境要因(ウイルス感染など)、免疫系の異常などが関与していると考えられています。1型糖尿病の治療は、注射やインスリンポンプを用いたインスリン療法が中心です。1型糖尿病は現時点で根治する方法がないため、生涯にわたりインスリン治療を続ける必要があります。

2型糖尿病

2型糖尿病とは、インスリンの分泌不足やインスリン抵抗性(体の細胞がインスリンに十分に反応しなくなること)により、血糖値が慢性的に高くなる病気です。遺伝的要因や環境要因(肥満や不健康な食事、運動不足、ストレスなど)が関与します。2型糖尿病は、糖尿病全体のうち90%以上を占める最も一般的なタイプで、中高年層や肥満の人に多く見られます。治療法としては、食事療法や運動療法、薬物療法などがあり、患者さん一人ひとりに合わせた治療法が選択されます。

妊娠糖尿病

妊娠糖尿病とは、妊娠中に初めて発見される高血糖の状態で、妊娠前には糖尿病でなかった女性に発生したものをいいます。妊娠中期から後期(24〜28週)に胎盤から分泌されるホルモンがインスリンの働きを阻害し、インスリン抵抗性を高めるため、血糖値が上昇することが原因です。妊娠糖尿病は母体と胎児の健康に影響を与える可能性があるため、早期の診断と適切な管理が重要です。医師の指示のもと、栄養バランスの取れた食事や適度な運動、インスリン療法などで血糖値を適切にコントロールしていきましょう。

糖尿病の主な症状

糖尿病の主な症状は、頻尿や喉の渇き、倦怠感、急激な体重減少などです。発見が遅れると腎臓病や神経障害、心血管疾患といった深刻な合併症を引き起こす可能性があります。糖尿病で起こりうる症状を把握し、異常の早期発見に努めましょう。

多尿・頻尿

多尿・頻尿は、糖尿病の代表的な症状の一つです。糖尿病では血糖値が高くなるため、体は余分なグルコースを尿として排出しようとします。グルコースが尿中に溶け込むと尿の浸透圧が高くなるため、尿量が増えることでトイレの回数が増えるのです。また、多尿・頻尿により体内の水分が失われると、体は脱水状態に陥ります。脱水症状によって喉の渇きを感じると多くの水分を摂取するため、さらに尿量が増えるという悪循環が生まれます。

喉の渇き

先述したように、高血糖の状態では尿量が増え、体内の水分が失われることで脱水症状を引き起こします。喉の渇きによって通常以上の量の水を飲むようになりますが、それでも口渇感は解消できず、さらに頻繁に水分を摂取するようになります。

倦怠感

倦怠感とは、体全体がだるく、疲れやすいと感じる状態です。糖尿病では、インスリンの不足やインスリン抵抗性によって細胞がグルコースをうまく取り込めず、エネルギー源が不足します。この結果、体全体にエネルギーが行き渡らず、倦怠感や疲労感が生じます。また、高血糖や低血糖の状態を繰り返すことでエネルギー供給が不安定になり、身体的な疲労や精神的なだるさを感じることもあります。

体重減少

体重減少は、1型糖尿病や、2型糖尿病の重症例でみられる症状の一つです。先述したように、糖尿病では、体内の細胞がグルコースをエネルギー源として利用できなくなります。そのため、体は脂肪や筋肉を分解してエネルギーを補おうとし、その結果、体重が減少します。また、体が脂肪を分解する際にはケトン体という物質を生成します。ケトン体の生成は体重減少を引き起こすことがあり、ケトアシドーシスという危険な状態に繋がることもあります。

糖尿病を放置するとどうなる?

糖尿病の初期症状は軽度なものが多いですが、時間が経つにつれて、心臓病や腎不全、視力障害、神経障害など、深刻な合併症を引き起こす可能性があります。ここでは、糖尿病を放置することで起こりうる三大合併症について詳しく解説していきます。

糖尿病性網膜症

糖尿病性網膜症とは、糖尿病によって眼の網膜が損傷を受ける病気です。高血糖によって網膜の血管が傷み、出血や漏れが生じることで視力が低下します。進行すると視力障害や暗点、視界の歪みなどが現れ、最終的には失明に至る可能性もあります。見え方に異常を感じたら放置せず、早急に眼科を受診しましょう。

糖尿病性腎症

糖尿病によって腎臓の血管が損傷を受け、腎機能が低下する病気です。腎臓のフィルター機能が損なわれ、最終的には腎不全に進行することもあります。初期段階では自覚症状がないことが多く、尿中のタンパク質(尿蛋白)が増加することで診断されます。進行すると、高血圧やむくみ、貧血などの症状が現れることがあります。

糖尿病性神経障害

糖尿病性神経障害とは、糖尿病によって神経が損傷を受ける疾患です。特に末梢神経(手足の神経)が影響を受けやすく、感覚や運動機能が障害されます。自覚症状としては手足のしびれや痛み、感覚鈍麻、筋力低下などです。重症例では足のけがや潰瘍に気づかず、発見したときにはすでに感染症を起こしていることもあります。

糖尿病の治療方法

糖尿病の治療の目的は、血糖値を適切に管理し、健康を維持することです。食事療法・運動療法・薬物療法を組み合わせることが一般的で、患者さん一人ひとりの病態や全身状態、生活習慣に合わせた指導が行われます。

食事療法

適切な食事管理を行うことで、血糖値の安定を図り、糖尿病による合併症のリスクを低減させることが期待できます。糖尿病の食事療法の主要なポイントは、以下のとおりです。

バランスのとれた食事

  • 栄養のバランス:炭水化物・たんぱく質・脂質をバランスよく摂取し、偏った食事を避けることが重要です
  • 食物繊維の摂取:食物繊維が豊富な食品(全粒穀物や野菜、果物、豆類など)は、血糖値の急激な上昇を防ぎ、消化を助けます

炭水化物の管理

  • 低GI食品:GI(グリセミックインデックス:食品が血糖値に与える影響の指標)が低い食品(玄米や全粒パン、豆類など)を選ぶことで、血糖値の上昇を抑えることができます
  • 適切な量の摂取:一度に大量の炭水化物を摂取するのではなく、適切な量を複数回に分けて摂取することが推奨されます

食事のタイミングと頻度

  • 規則正しい食事:食事の間隔を均等に保ち、1日の食事回数を5〜6回に分けることが推奨される場合もあります
  • 間食の管理:血糖値をコントロールするため、健康的な間食(ナッツやヨーグルト、フルーツなど)を適量摂取することが推奨されます

塩分と脂肪の制限

  • 低塩分の食事:高血圧のリスクを減らすために、塩分の摂取を控えめにします
  • 健康的な脂肪の選択:飽和脂肪やトランス脂肪を避け、オメガ3脂肪酸(魚やナッツに含まれる)など、健康的な脂肪を選ぶことが推奨されます

水分補給

水分を適切に摂取することで脱水を防ぎ、血糖値の安定にもつながります。糖分の含まれない飲料(水やお茶など)を選ぶことが大切です。

運動療法

適度な運動は血糖値のコントロールに直接的な影響を与えるだけでなく、心血管系の健康を改善し、体重を管理するのにも役立ちます。

有酸素運動

週に150分程度の有酸素運動(ウォーキングやジョギング、水泳、自転車など)が推奨されています。

レジスタンス運動

週に2回程度の筋力トレーニング(ウェイトトレーニングやレジスタンスバンドを使った運動など)が推奨されています。筋力を向上させることで、インスリン感受性が改善されます。

ストレッチ

柔軟性を高めるストレッチを取り入れると、けがの予防や身体のリラクゼーションに役立ちます。

注意点

低血糖や高血糖を避けるため、運動前後には血糖値のモニタリングを行いましょう。インスリンや血糖降下薬を使用している場合は、運動による血糖値の変動に特に注意が必要です。ほかにも持病がある場合や、長期間運動していない場合は、事前に医師と相談して安全な運動プランを立てましょう。また、運動中の怪我を防ぐためには、適切な運動靴や服装を選ぶことも大切です。

薬物療法

薬物療法は、血糖値を適正にコントロールするための重要な手段です。糖尿病の薬物療法は、患者さんの状態や糖尿病のタイプに応じて、さまざまな種類の薬が使用されます。

経口血糖降下薬

  • ビグアナイド系(メトホルミン):肝臓でのグルコース産生を抑制し、筋肉や脂肪細胞でのインスリン感受性を高めます
  • スルホニルウレア系:膵臓からのインスリン分泌を促進します(例:グリベンクラミド、グリメピリド)
  • チアゾリジン系:インスリン感受性を改善し、体内の脂肪細胞に作用します(例:ピオグリタゾン)
  • DPP-4阻害剤:インスリンの分泌を促進し、グルカゴンの分泌を抑えることで血糖値を低下させます(例:シタグリプチン)
  • SGLT2阻害剤:腎臓でのグルコース再吸収を抑え、尿中に排泄させることで血糖値を低下させます(例:ダパグリフロジン)
  • GLP-1受容体作動薬:インスリン分泌を促進し、食欲を抑える作用があります(例:リラグルチド)

インスリン療法

1型糖尿病の主な治療法はインスリン療法です。また、2型糖尿病が進行し、経口薬では十分に血糖コントロールができない場合にも適応されます。皮下注射またはインスリンポンプを使用し、インスリンを投与します。インスリンの種類には、速効型・中間型・持続型などがあります。インスリンポンプとは、持続的にインスリンを注入する装置で、より細かい血糖管理が可能です。

まとめ

糖尿病を放置すると、さまざまな健康リスクが高まることが分かりました。

糖尿病の分類や起こりうる症状を理解し、適切な治療方法を実践することが、合併症の予防や健康の維持には不可欠です。

ご自身やご家族の健康を守るため、定期的に病院で血液検査を受けましょう。

また、気になる症状があれば、早めの受診をおすすめします。

早期の対処と継続的なケアが、糖尿病による深刻な合併症を防ぎ、QOL(生活の質)を維持するための重要なポイントとなります。

参考情報

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