2025年7月3日、横浜市の屋内スキー施設で4人が救急搬送される事故がありました。
施設内からは一酸化炭素(CO)が検出され、一酸化炭素中毒が疑われるとのことです。
幸い、いずれも軽症とのことですが、一酸化炭素は目に見えずにおいもないため、気づいたときには中毒が進行しているケースも少なくありません。
暖房器具や車の排気、密閉された屋内施設など、私たちの身近な場所でも発生するリスクがあるため、日頃からの備えが欠かせません。
この記事では、一酸化炭素中毒の症状や初期対応、予防のポイント、後遺症のリスクまでを詳しく解説していきます。
一酸化炭素とは?身近な“サイレントキラー”の正体
暖房器具やガスコンロなどが、酸素の少ない状態で燃えたとき(不完全燃焼)に発生します。
体に取り込まれると、血液の中の酸素と入れ替わり、頭痛・めまい・吐き気などの体調不良を引き起こします。
特に、換気が不十分な室内でストーブやガス機器を使っているときは要注意。
気づかないうちに体をむしばむため、「サイレントキラー(静かな殺し屋)」と呼ばれるほど危険です。
どんな時に起こる?一酸化炭素中毒が発生する原因とは
一酸化炭素中毒は、私たちの身近にある「火」を使う場面で起こります。
たとえば、ガスコンロや石油ストーブなどを使っていて、換気が不十分だと、知らないうちに部屋の中に一酸化炭素がたまってしまいます。
これを吸い込むことで、体に不調があらわれるのです。
また、冬の雪道で車を停めてエンジンをかけたままにしていると、マフラー(排気口)が雪でふさがれて排気ガスが車内に逆流し、中毒を引き起こすことも。
キャンプ中にテント内で火を使うことも、同様に危険です。
一酸化炭素中毒は、特別な場所で起こるものではなく、日常生活の中でも十分に起こりうることを覚えておきましょう。
一酸化炭素中毒の初期症状|風邪との見分けに注意
・頭痛
・めまい
・ふらつき
・吐き気・嘔吐
・だるさ
・眠気
・集中力低下
一酸化炭素中毒の初期症状は風邪とよく似ていて、見過ごされてしまうことがあります。
頭痛やめまい、吐き気、体のだるさなど、よくある不調の裏に、一酸化炭素中毒がかくれていることもあるんです。
特に、暖房器具やガス機器を使っている室内でこのような症状があらわれたときは要注意。
換気をして症状が楽になるようなら、空気中の一酸化炭素が原因かもしれません。
同じ部屋にいる人も同様の不調を訴えている場合、さらに注意が必要です。
初期症状が出たらすぐにやるべきこと3選
一酸化炭素中毒は、早めの対応がとても重要です。
「ちょっと変だな」と感じたら、迷わず行動を。
ここでは、初期症状が出たときにすぐできる対処法を3つに絞ってご紹介します。
1.まずは外へ避難を
一酸化炭素は空気中に広がりやすく、気づかないうちに体に入ってしまいます。
暖房器具を使っている部屋や車内で異変を感じたら、まずは屋外に出て、新鮮な空気を吸いましょう。
「ちょっと変だな」と思った段階で行動できるかどうかが、命を守るうえでとても重要です。
2.体温低下を防ぐため、ひざ掛けや上着で保温しよう
一酸化炭素中毒になると、体に十分な酸素が行き渡らなくなり、体温をうまく調整できなくなります。
その状態で屋外に出て冷たい空気にさらされると、体が一気に冷えてしまうことがあるため注意が必要です。
ひざ掛けや上着で体をしっかりあたため、無理に動かず、安静にして過ごしましょう。
3.症状が改善しなければ迷わず救急車を呼ぼう
一酸化炭素は酸素のはたらきを妨げるため、放っておくと命に関わる危険があります。
呼びかけに対する反応が鈍い、意識がもうろうとしているといった場合は、一刻も早い医療処置が必要です。
「ちょっと様子を見ようかな」と自己判断せず、医師の診察を受けることをおすすめします。
一酸化炭素中毒が進んだときにみられる症状
・筋肉のけいれん
・脱力感
・呼吸のしづらさ
・胸の圧迫感
・視覚や聴覚の異常
・昏睡
・意識の消失
一酸化炭素中毒が進行すると、頭痛やめまいだけでは済まなくなります。
頭がぼんやりする、会話がかみ合わない、ふらついて立っていられないといった症状が出てきたら注意が必要です。
さらに重症になると、手足が震える、意識がもうろうとする、呼吸が苦しくなるなど、深刻な状態に陥ることもあります。
体調の変化がいつもと違う、周りの人も同じような不調を感じている――そんなときは、すぐに外に出て新鮮な空気を吸い、救急車を呼びましょう。
定期的な換気とCO警報器の活用で一酸化炭素中毒を予防しよう
一酸化炭素中毒は、家庭内の身近な場面でも発生するおそれがあります。
だからこそ、日ごろの備えがとても大切です。
まず意識したいのは「定期的な換気」です。
暖房器具やガス機器を使うときは、1〜2時間おきに窓を開けて空気を入れ替えましょう。小さなすきま風でも効果がありますよ。
また、一酸化炭素を感知してブザーなどで知らせてくれる「CO(一酸化炭素)警報器」があると、いざというときに音で知らせてくれるので安心です。
ご自身と大切な家族を守るために、今できる対策を始めてみましょう。
放っておくと怖い?一酸化炭素中毒による後遺症のリスク
一酸化炭素中毒を引き起こすと、回復後も後遺症が残ることもあります。
体内に十分な酸素が行き渡らなくなることで、脳や神経がダメージを受けるためです。
たとえば、以下のような症状がみられることがあります。
- もの忘れ・集中力の低下(記憶障害)
- 手足が動かしにくい(運動機能の障害)
- イライラしやすい・落ち込みやすい(気分障害)
- 筋力の低下
- 手足のふるえや動きの鈍さ(パーキンソン症候群)
こうした後遺症はすぐには気づきにくく、時間がたってからあらわれることも。
早めの対処と医療機関での適切な処置が、重症化や後遺症のリスクを減らすカギとなります。
まとめ|初期のサインを見逃さず、命を守る行動を
一酸化炭素中毒は、気づかぬうちに症状が進行し、重篤な状態に陥るおそれのある危険なトラブルです。
頭痛や吐き気など、日常的な体調不良と似たサインでも、いつもと違うと感じたら「もしや」と疑うことが大切です。
屋内では定期的な換気を心がけ、CO(一酸化炭素)警報器の設置も検討してみましょう。
いざというときの対処法を知っておくだけでも、落ち着いて行動しやすくなりますよ。
日々の予防と早めの対応で、自分と家族の大切な命を守りましょう。