急性硬膜下血腫とは?症状や治療法、後遺症のリスクを詳しく解説

暮らしと健康

2025年5月27日(火)。

プロボクシング元IBF世界ミニマム級王者・重岡銀次朗選手(25)が、24日の試合後に急性硬膜下血腫きゅうせいこうまくかけっしゅを発症し、緊急の開頭手術を受けたとの報道がありました。

この記事では、急性硬膜下血腫の症状や治療法、後遺症のリスクについて詳しく解説します。

急性硬膜下血腫とは?

急性硬膜下血腫とは、脳の表面と硬膜(脳を包む膜)のあいだに出血が起きている状態です。

脳が圧迫されることで深刻な症状を引き起こすことがあり、緊急性の高い病気として知られています。

交通事故や転倒で頭を打った後、しばらく時間がたってから強い頭痛や嘔吐、意識もうろうとした状態になることがあります。

速いスピードで出血が進むこともあるため、外傷直後に異変が見られた場合はすぐに医療機関を受診することが大切です。

急性硬膜下血腫の主な原因と発症リスク

原因として多いのは、交通事故や転倒などによる頭部の打撲です。

急性硬膜下血腫は主に、頭への強い衝撃によって発症します。

抗凝固薬こうぎょうこやく(血液をさらさらにする薬)の服用中の転倒にも注意しましょう。

急性硬膜下血腫の症状は?初期のサインに注意

急性硬膜下血腫では、頭を打った後にさまざまな症状があらわれます。

特に見逃しやすい初期のサインに注意が必要です。

強い頭痛

急性硬膜下血腫では、頭部を打った後に強い頭痛がみられることがあります。

これは脳が圧迫されて起こる痛みで、次第に悪化するのが特徴です。

「ズキズキする」「締めつけられる」といった感覚が続く場合は注意が必要です。

意識障害

出血によって脳が圧迫されると、意識がもうろうとしたり、呼びかけに反応しにくくなったりすることがあります

軽い眠気にみえても、実際には症状が進行している可能性があるため、早めの受診が重要です。

吐き気や嘔吐

頭の中の圧力が高まることで、吐き気嘔吐を起こすことがあります。

食あたりや風邪と勘違いされやすい症状ですが、頭部を打った直後や意識の変化をともなう場合は注意が必要です。

片側の手足が動かしにくい・しびれる

出血が脳の運動機能をつかさどる部分を圧迫すると、片側の手足に力が入りにくくなったり、しびれを感じたりすることがあります

本人よりも先に、身近な人が異変に気付くこともあります。

けいれん発作

出血によって脳が刺激されることで、けいれん発作が起こることがあります。

手足が突っ張る全身が震える白目をむくなどの症状がみられたら要注意です。

小児や高齢者では、初期のサインとしてあらわれることもあるため、すぐに救急対応が必要になります。

放置せずに、早めに受診を検討しましょう。

言葉が出にくい、会話が成り立たない

脳の言語中枢が圧迫されることで、言葉がうまく出てこない話がかみ合わないといった症状がみられることがあります。

受け答えが不自然になったり、簡単な言葉が出にくくなった場合は注意が必要です。

本人は異常に気付きにくいため、周囲の人の気付きが早期対応につながります。

瞳孔の左右差

急性硬膜下血腫が進行すると、脳が圧迫されて片側の瞳孔(ひとみ)が開いたままになることがあります。

左右の瞳の大きさが異なる、光に反応しないなどの変化がみられたら、危険なサインです。

命に関わることもあるため、ためらわずに救急車を呼びましょう。

急性硬膜下血腫の治療法

急性硬膜下血腫の治療は、出血の量や症状の重さによって方法が異なります。

ここでは、主な治療法をご紹介します。

保存的治療(経過観察)

出血量が少なく症状が安定している場合は、保存的治療が選ばれることがあります。

定期的にCT検査などで血腫の変化を確認しながら、安静や点滴で経過を見守る方法です。

穿頭血腫除去術

穿頭血腫除去術は、頭蓋骨に小さな穴を開けて血腫を吸い出す手術です。

身体への負担が比較的少なく、高齢者や軽症の患者さまに用いられることがあります。

局所麻酔で行える場合もあり、早期に症状の改善が期待されます。

開頭血腫除去術

開頭血腫除去術とは、頭蓋骨の一部を切開して血腫を取り除く手術です。

大量出血や脳の圧迫が強い場合に行われます。

全身麻酔で実施されることが多く、術後は集中管理のもとで慎重に経過を見守ります。

集中治療(ICUでの管理)

急性硬膜下血腫の重症例では、手術後も集中治療室(ICU)での管理が必要になります。

呼吸や血圧、脳圧などを厳密にコントロールし、合併症を防ぐことが目的です。

小さな変化も見逃さない体制で、状態の安定を目指します。

回復への重要なステップとなるため、慎重な経過観察が欠かせません。

リハビリテーション

急性硬膜下血腫の後遺症を最小限に抑えるためには、リハビリテーションがとても重要です。

歩行訓練言語訓練などを通じて、失われた機能の回復を目指します。

早期に始めることで効果が高まるとされており、医師や理学療法士と連携しながら、無理のない範囲で行います。

急性硬膜下血腫の後遺症のリスク

急性硬膜下血腫は、早期に治療しても後遺症が残ることがあります。

脳の損傷が広がると、手足のまひ言語障害記憶力の低下などがみられることもあり、日常生活に支障をきたす可能性があります。

特に高齢者では回復に時間がかかるケースが多く、介護やサポートが必要になる場合も。

治療後は医療チームと連携しながら、リハビリや経過観察を丁寧に続けていくことが重要です。

不安な症状があれば、迷わず医療機関へ相談を

急性硬膜下血腫では、頭を打った直後だけでなく、時間がたってから症状があらわれることもあります。

強い頭痛や意識の低下、手足のしびれなどを見逃さず、少しでも異変を感じたら早めに受診することが何より大切です。

医療機関での早期対応が、命を守り後遺症のリスクを減らす第一歩となります。

自己判断に頼らず、「おかしいな」と思ったら迷わず専門家に相談しましょう。

参考文献

https://www.neurosurgery.med.keio.ac.jp/disease/other/03.html
神経外傷
慢性硬膜下血腫|対象疾患|医療関係者へ|近畿大学医学部 脳神経外科
近畿大学医学部 脳神経外科 公式ウェブサイト。頭部外傷の「慢性硬膜下血腫」に関する情報をご覧頂けます。
タイトルとURLをコピーしました